花咲かせ人たち ~桜がお花屋さんに並ぶまで~

お花屋さんには、冬から早春にかけて「桜」の花が出回ります。「啓翁桜」や「東海桜」などの早咲きの品種は、ソメイヨシノが路地で花開く季節よりも一足早く、華やかに春の気分を演出するのに最適です。 ここでは桜の生産者や流通業者のお仕事を紹介します。お花屋さんで桜を見かけたら、桜を作る人々のお話をちょっと思い出してくださいね。

たまねちゃんが行く!桜の切り枝「東海桜」の生産地、福島県郡山市

花と緑の情報サイト「花さんぽ北日本」の人気キャラクター“たまねちゃん”が、春を待つ寒い季節に出荷される桜の切花の生産地、福島県郡山市を訪ねました。東海桜(桜の木の切り枝)を生産しているJA郡山市花卉部会宮城支部さんにおじゃまし、栽培山での伐採の様子や、加工所での開花調整の様子を見せていただきながら、現場の方々にお話を伺いました。桜を綺麗に咲かせるためには、色々と工夫されて手間をかけられていることを知ることができました。

品質へのこだわり

JA郡山市宮城支店の渡辺さんのお話から・・・

旬は1月の末あたりから2月中旬くらいまで。山で東海桜を選定して伐採し、加工所に持ってきて束ねて、温室で花がちゃんと咲くように調整してから、出荷します。ざっとですが、1束10本のものが東海桜だと約15,000束、他の品種の桜も合わせると60,000束位になります。最近のお客様は眼が肥えていて、悪いものは絶対買わないので、生産者も手は決して抜いてないですね。

花を咲かせるには冬の寒さが必要なんです

生産者の柳沼さんのお話から・・・

注意していることは「枝ぶり」と「つぼみのつき方」。なるべく均等に枝分かれしていて、つぼみも均等についている物を選んでます。製品として伐採できるまでには、植樹してから5年くらいはかかります。最近苦労しているのはカイガラムシによる被害。暖冬の影響で、雪も寒さも足りないせいでしょうか。土の乾燥を防いだり、綺麗な花を咲かせるには冬の寒さが必要なんです。

温度や光の管理など、出荷までの工程が決め手となります

出荷場の伊藤さんのお話から・・・

調整・出荷場では、蕾を大きくしてお客さんに届いた頃にちゃんと咲くように工夫を行っています。切り出した桜の枝に十分に水を吸わせ、約20度の温室にいれます。10本に束ねた後、綺麗な花色が出るようにするためにお日様に当てます。こうすることによって枝の上から下までのつぼみがきれいに咲いてくれます。出荷までは約20日間です。

桜の切り花を手がける、兵庫県の老舗の花材屋「花宇」さんを訪ねて

「花いろかんさい」では、兵庫県川西市にある花材屋「花宇」の西畠清順さんに桜についてお話を伺いました。 「花宇」は明治元年に創業された老舗の花材屋さんです。珍しい観葉植物や枝モノなどをたくさん持っておられます。日本ではじめて温度管理をすることで桜の開花コントロールに取り組んだということで、なんと要望があれば、秋でも桜を咲かせることができるんだとか!

職人技!経験と感覚で花芽をチェック

枝モノの桜は、栽培している山からまだまだ雪深い時期に全く花の咲いていない枝を切り出します。切り出した枝を花宇の温室で徹底的に管理。経験と感覚で毎日毎日花芽の様子をチェックし、必要とされる時期に、必要とされる頃合まで花の様子を持っていくのは、まさに職人技です!

長野県筑北村の彼岸桜と花宇

花宇が最も得意とするのは彼岸桜。この桜は、長野県の「筑北村(ちくほくむら)」という松本市の北に位置する豪雪地帯の小さな村で栽培しています。昭和40年ごろに花宇3代目主人の西畠宇ノ松さんが桜の苗を配り、栽培をお願いしたのが始まりでした。筑北村は高年齢化と過疎化が進んでおり、また冬の間はほとんど農作業ができず、主だった収穫がほとんどないのだそうです。つまり、この彼岸桜は冬の筑北村にとっては大切な収入源なんです。花宇とともに最初の桜を植えてから四十数年・・・、彼岸桜が冬の筑北村を元気にしてきたんですね!

人々の想いが込められた桜

この彼岸桜は切っても腐りにくく、6年ほどすると元に戻るのだそうです。 桜をたくさんの人に楽しんでもらって、もっともっと桜を好きになってもらいたい。そんな想いで、手をかけて大切に育てられているのです。 そうやって育てるからこそ切り出すことができる、そして切り出して枝モノにするからこそ楽しむことができる、そんな桜のすばらしさが彼岸桜にはあるのでしょう。

桜の切花を飾ってみませんか

桜の生産地にまつわるお話、いかがでしたか?
ソメイヨシノの桜が野外で咲き乱れる季節を前に、一足早くご家庭や店頭ディスプレイで桜を楽しんでいただくために、花屋の店頭には1月頃から桜の切花が登場します。そのお花がお店に並ぶまでには、生産現場や流通業者の努力や工夫があります。そのことを頭の片隅に少しだけ置いて、早咲きの桜の切花を見かけたら、桜の花を咲かせる人たちのことを思い浮かべていただけると、桜の花1つ1つがより一層愛しく思えるかもしれませんね。

桜の切花は全国の日比谷花壇およびオンラインショップ(日比谷花壇ドットコム)にて取り扱っております。なお、販売商品および期間については店舗によって異なりますので、お近くの店舗にてお確かめください。

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