樹木医が選ぶ桜の名木

日比谷花壇グループ「エコル」が、全国各地の樹木医が選ぶ「桜の名木」を紹介していきます。
今回は、財団法人日本花の会の和田樹木医が、伊豆大島にあるサクラの古木「サクラ株」について紹介します。

vol.4 東京都大島町(伊豆大島)のサクラ株

大島のサクラ株の紹介

大島のサクラ株
横たわった太枝からは不定芽が多く伸びる(2009年2月)

大島のサクラ株
昭和34年頃のサクラ株

東京の都心部から南約120kmの沖合にある伊豆大島には、樹齢800年※といわれるオオシマザクラの古木があります。この桜は「大島のサクラ株」といい、1935(昭和10)年に国の特別天然記念物に指定されました。 太枝が倒れ、龍がのたくるり横たわったように見えますが、このサクラは樹形を環境に合わせて変えながら、したたかに生き延びています。 東京都では2004年から樹勢調査や環境調査を実施し、このサクラの保全に努めています。

※大島のサクラ株の樹齢を正確に記したものはありませんが、地質学的には1552年(天文21年)噴火の溶岩流の上にあることから、それ以後のものと思われます。また、役の行者のお手植えという伝説もあり、役の行者が699年に伊豆に流され、その時のお手植えということであれば、樹齢は1300年となります。


豊かな自然と地域住民が育む「大島のサクラ株」-その驚くべき生命力-

大島のサクラ株は大島の北東部、泉津地区にあり、地元では「サクラッ株」と呼ばれ、天然記念物に指定されるずっと前から地域の人たちに大切に保護されてきました。昔は、房総方面から大島に向かって海を渡る時は、この桜を目印に航海したといわれるほどの大木だったそうです。

大島のサクラ株
2007 年の開花の状況
大島のサクラ株
横たわった太枝から伸びる不定根

サクラッ株は名前のとおり株立ち状になっています。中心となる元株は主幹が朽ち、太枝が横たわり、一見するとあまり管理されていない古木の印象を受けます。しかし、この桜の本当の価値は、朽ちて横たわった枝と周囲に立ち上がった3本の桜にあることはほとんど知られていません。私も調査(2004年6月)に携わるまでは知りませんでしたが、サクラッ株は自身の生命力と地元の管理があってこそ、今のような樹形に次々と姿を変えながら生き延びてきたのでした。

サクラッ株は、もとは一本のオオシマザクラの大木だったと思われます。 現在、元株の主幹は高さ約2mから上が枯れ、太枝が北東方向に伸び、立ち上がっていましたが、これも2004年5月29日に強風で倒れてしまいました。

この元株とは別に東、西、北側の離れた場所に各1本ずつ上に伸びた幹があります。 これらは元株と連なったようになっており、何年も前に元株の枝が台風などの強風で折れ、後にその場所で立ち上がったものと思われます。 その過程ははっきり断定できませんが、おおよそ次のように想像できます。

(1)南側にあるタブノキとスダジイに被圧され、サクラッ株が空間の開いている北東側に枝葉を伸ばす。
(2)大風の影響などで太枝が付け根がつながったままねじれるように倒れる。
(3)太枝の付け根辺りから不定根が生じ、折れた枝の中を伸びる。
(4)不定根は地表と接した所に根を下ろし、残った地上部または根元付近から生じたヒコバエが伸び、幹となる。

この過程は小さな規模ですが今でも見ることができます。 たこ足状に伸びた不定根がそれです。桜は不定根を出しやすく、不定根を地に下ろすことにより生き長らえやすい樹木ですが、サクラッ株ほどに見事な生命の維持と更新を図っているものは他にありません。 この生命力こそがサクラッ株の価値であり、非常に貴重なものといえます。

サクラッ株の周囲には、平成19年3月に見学者用の歩道とデッキが設けられました。サクラッ株に見学客による踏み込みなどの影響を極力少なくするためです。
今もサクラッ株の観察は続いています。太枝が倒れて5年になろうとしています。倒れた枝からは不定芽が多く伸びています。これらを今後どう活かして樹勢回復につなげるか検討中です。
サクラッ株は3月下旬には花を咲かせます。この時期大島ではツバキの花も併せて見ることができます。是非一度、驚異の生命力を持つサクラッ株を見に行ってください。


大島のサクラ株
東京都大島町
泉津福重

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樹木医 和田博幸
(財団法人日本花の会)

財団法人日本花の会主任研究員。桜の名所づくりや桜や花によるまちづくりの計画・調査業務を担当。国指定天然記念物の山高神代ザクラ(山梨県)や大島のサクラ株(東京都)の樹勢回復にも携わる。

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